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2006年9月24日 (日)

味の記憶 その3 「じゃがいも」

今回も、ロンドン時代のメモをまとめてアップしてみた。 1998年のころのものだ。

「ジャガイモ」が今回のテーマである。私の記憶をたどると、ジャガイモが私の意識にきちんと定着したのは、小学校の理科の時間でジャガイモを自分の庭で植えた頃からでは無いかと思う。植えてから毎朝庭を見て芽が出るのはまだかまだかと心を躍らせた記憶はあるが、芽を出してちゃんと実りがあったのかどうかとなると思い出せない。人は死ぬ直前に、生まれてからこの方記憶が走馬燈の様に脳裏を駆けめぐる体験をするらしいが、そのときこれを思い出すかも知れない。

ジャガイモの記憶は、それから母がよく作ってくれたジャガイモバターに繋がる。アルミホイルにバターを敷いてその上に大きな皮付きのジャガイモを乗せ塩をふってからくるんで、蒸し焼きにする簡単な料理なんだけれど、それを何故かご飯のおかずとして食べた。栄養学的に考えると澱粉質の取りすぎに思えが....。 アルミホイルを開けたと時のバターの香りが何とも言えなかったけれど、社会人になって札幌に行って、大通り公園でその匂いを思いだした。北海道名物のジャガイモバター。人はおいしいと言うけれど、母の作ってくれたじゃがいもバターの方がうまいと思った。母の料理は偉大なり!

大学3年の時、ドイツ人の先生が主催する夏ゼミでドイツに3ヶ月滞在した。 私のあらたなジャガイモとの出会いである。ドイツ語でKartoffel。 ドイツ人はジャガイモが主食と言われていたが、ジャガイモにはいろいろ食べ方があることを知った。 いわゆるポテトサラダ(ジャガイモを茹でて適当に切って、ソーセージやタマネギを刻んでマヨネーズやワインビネガー、塩胡椒で味を調える)という一大ジャンルがあり (母が良く作ったポテトサラダもこのジャンルに入る。 確か、スパゲッティーも入っていたと思う))肉料理の付け合わせに、マッシュポテトやベークトポテトや茹でただけのポテト添えてを肉のソースと一緒に食べる。

それからPommes Frites - 私は、ポメス・フリテスと言ってオーダーしたのだけれど、よく聞いていると周りはポム・フリと言っている。ラテン語か?フランス語か? ゼミの最後に、パリヘ行ってフランス語でジャガイモは、Pomme de terreと言い、文字通りには「地中のリンゴ」と知った。 Fritesは、油でフライにする意味だから、ポテトフライとなる。 いわゆる日本では、当時日本に進出して銀座に一号店をだしたマクドナルドのマック・ポテト!マック・ポテトは、塩をふって食べるだけだったけど、ドイツでは、マヨネーズをかけたり、ケチャップをかけたりオニオンを刻んだのを加えたりして食べていた。 

後年、アムステルダムで生活した時にもこのPommes Fritesにはだいぶお世話になった。オランダ語では、Patatfiritte。 但し、ジャガイモそのものは、Aardappel  (フランス語と同じで地中のリンゴ)と呼んでいる。オランダもドイツと同じで町中のスタンドのあちこちでこれを売っていて、みんな立ち食いする。3時のおやつと言う感じ。このPommes Fritesについては、ドイツやオランダのものがかりかりと揚がっていて香ばしい、ベルギーやフランスより(ちょっと油っぽい)勝る言っていたのは故開高健氏だったように記憶する。

30代半ばになって自分で料理に凝りだした頃最初に覚えたジャガイモ料理はフランスのリヨン名物のポテトグラタンだった。 ジャガイモを薄切りにして、耐熱皿に薄く敷き、ニンニクの薄切りを置いてシナモン、胡椒、塩を振り、その上に又ジャガイモを敷いて.....繰り返し。最後に牛乳と生クリームを半分半分に混ぜた物をジャガイモがちょっとかぶるくらいまで入れて、電子レンジ(230度位)で約30分位。10分前に、適当に溶けるチーズをふりかけ(種類はあなたのお好み次第)て出来上がり。 出来上がってから、15分くらい寝かせるのでその間にステーキを焼いて(ビーフに黒胡椒をまぶしたペッパー・ステーキ)、ブロッコリーの塩茹でなどを付け合わせて一緒に食べればちょっとしたフランス料理の醍醐味を味わえる。

かと思うと、スウェーデンのこんなおいしいレシピもある。 じゃがいもを切り(薄切り、フレンチフライスタイル切り何で可)、薄切りのタマネギと一緒にオリーブオイルで炒める。胡椒のみ振り、塩は絶対に振らない。耐熱皿にジャガイモとタマネギの半分を敷き、その上にアンチョビーをお好みで5から6匹敷き、その上に又ジャガイモとタマネギを乗せる。生クリームをひたひたになるくらいまでかけて、電子レンジで20から30分。15分位寝かしてビールと一緒に寒い冬に食べるとたまらない。アンチョビーの塩分がジャガイモとマッチして旨い。 

母の手料理やヨーロッパ大陸では大変お世話になったジャガイモだが、原産地は南米と聞く。コロンブスが梅毒とジャガイモとトマトを南米から持ち帰って15世紀以降ヨーロッパにアッと言う間に広がったらしい。日本にはいつどういう経路で入ったのだろうか? 種子島への鉄砲伝来と一緒だろうか? 梅毒はそうらしいが。 このジャガイモによってヨーロッパは人口が増えたのかも知れない。 永い中世時代からルネッサンスを経て、英国を皮切りにヨーロッパは産業革命を起こしいわゆる近代に突入すると歴史の本には書かれているがこの時期、ヨーロッパでは人口が爆発的に増えている事実は何を意味しているのか。何故? Why?  Warum?  Pourquoi?  私は、当時普及したジャガイモが人々の腹の足しとなり大人数を養い、労働力を提供し産業革命に至ったのだとと密かに思っている。 「ジャガイモ無しに、近代はあり得なかった」! マックス・ウェーバー先生のとなえる「プロテスタントの倫理と資本主義の精神」なんて言うのは「後から見て結果に付けたさかしい台詞」にしか過ぎない。 世の専門家は、私のこの声に少し注意を向けるべきである!

今日のアメリカがあるのは何故か? 私が思うにやはりジャガイモである。 何?と怪訝に思う向きもあるかと思うが、19世紀に何人のヨーロッパ人がアメリカに渡っただろうか? 今日のアメリカの基礎は確かにもっとそれ以前の時代にピューリターンと一攫千金を夢見たならず者たちが作ったに違いないが、19世紀の気候の関係もあったのだろうか、ジャガイモが獲れなくて、食いはぐれたちが大挙してアメリカへ向かったと言う。 特にアイルランドのPotato Famine (ジャガイモ飢饉)はひどかったらしい。 ジャガイモが縁でアメリカは後の大統領Kennedyや映画の巨匠John Fordを輩出することになったのだ。

さて、現在私はロンドンで生活しているが、再びジャガイモのお世話になっている。 ジャガイモを食べない日など考えられない。 先ず、フィッシュ・アンド・チップス 。13年前に始めてロンドンに来た時には、屋台があちこちに有ったと記憶するが、そういう屋台は姿を消してしまった様だがフィッシュ・アンド・チップスは健在である。 食事をだすパブのメニューを見れば大抵一番最初に出ているのはこのフィシュ・アンド・チップスだ。 フィシュ・アンド・チップスの単語を連発しているが、フィシュは無視してチップスの方を注意してほしい。 フィッシュ・アンド・チップスのチップスは、ポテトチップスでは無く、Pommes Fritesであり、Patatfrittesであり、French Fryであり、マック・ポテト或いはフレンチ・ポテトである。 イギリスでは、いわゆるポテトチップスは、チップスとは言わずCrispと言うのだそうだ。 フィシュアンドチップスは、魚(普通は鱈)のフライにフレンチフライを付け合わせた簡単な料理だ。 フィッシュはもういい、と思ってチキンやラムをオーダーすると、ウェーターがwith chips ?と必ず聞いてくる。 そしたら、にっこりほほえんでYes, please.と応えれば、山盛りPommes Fritesが一緒に出てくる。 唯一、イギリスがヨーロッパ大陸と違うのは、このchipsmalt vinger (奇妙な味のするお酢-麦から作った酢)を掛けて食べることだろうか?

又時折、道を歩いていると、パブの入り口に「Jacket Potato」と書いてあるのをよく目にする。「ジャケットをまとったジャガイモとはこれ如何に」と思われる向きもあろうか思うが、ジャガイモが服をまとえる筈は無い。これは、皮付きのジャガイモをオーブン(又は電子レンジ)で焼いたジャガイモの丸焼きでのことである。 このように、誰もが簡単に出来る料理を、平気でレストランのメニューとしてでだすのがイギリスである。 びっくりしたが、このジャケットポテトにベークトビーンズ(大豆みたいなゆで豆をトマトソースであえた物、缶詰めで売っている。ゆで豆なのに何故ベークトなのかは、イギリス人も分からない)を付け合わせてメニューにしている所もある。

私も、自宅のキッチンにある電子レンジで早速作って見ることにした。ペーパータオルにくるんで(これがポイント、と電子レンジの操作マニュアルのjacket potatoの項には英文で書いてある)、一番高い温度の10番を選び、約10分電子レンジに入れ(5分後にひっくり返す-これもポイント)、10分寝かして、ハイ出来上がり。 ジャガイモに切れ目を入れてバターを乗せてみる。付け合わせは「ビーツのサラダ」(日本にはありませんが、赤蕪みたいな野菜をワインビネガーであえた物)。 一口頬張ると、少年時代に母がよく作ってくれたジャガイモバターと同じ味が広がる。

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