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2007年4月 4日 (水)

旅の記憶シリーズ(3)菜の花を巡る旅・ 我が家~鹿児島~ドイツの田舎

菜の花は大好きだ。宅地化が進んで我が家の東向きの畑と雑木林がいつのまにか無くなってしまった。18歳で上京したのだが、それ以来ろくすっぽ実家には寄り付かなかった。それでも、7~8年前までは、たまの夏休み、帰省すれば、東向きの畑と雑木林からは涼しい風が入って、2階のベッドで昼寝を貪るのはなかなかの快楽だな、と思ったものだ。言ってみれば別荘みたいなものだった。

子供の頃、春先になるとあちこちでヒバリの囀りを聞いたものだが、そのころの情景はあたり一面咲き乱れる菜の花の黄色と一緒に、なつかしく、そしてまた愛着を感じるセピアカラーの記憶として残っている。

社会人になって、しばらくてのこと、30代前半のころだろうか?鹿児島に出張したとき、鹿児島空港から市内までバスで移動中に、ぼんやりと外の景色を眺めていたら、一面、黄色・黄色・黄色の菜の花畑に出会った。息を呑んだ。

途端に、郷愁を覚えたものだ。春先の菜の花畑の黄色・黄色・黄色。そして、あちこちで乱舞するモンシロチョウ。

東京を引き払って、田舎に戻った年2年前の春、ドイツを仕事で旅行した。あちこちでまたまた、あの黄色い菜の花を見かけた。聞くところによると、環境問題に取り組む国の政策で積極的に菜の花を栽培してるという。時期はまさに、麗しき5月。 Im wunderschonen Monat Mai …. ロベルト・シューマンの歌が頭の中で響き渡る。

帰国前日の夕方、取引先の人に連れられてフランクフルトの郊外をドライブし、夕刻、旅籠風のレストランで夕食を取った。旬のアスパラガスを賞味した。何の変哲もない白い根っこを湯がいたものだが、バターソースを掛けて食べる。なかなか美味かった。

おいしいドイツビールを飲み、香草入りのワインも一杯飲んだ。MAIL BOWLERとかなんとか。ご一緒していただいたS女史は、Saumagen(豚の胃袋)を食べている。 大丈夫っすか? そんなグロテスクなもの食べて! おいしいですよ! 名前と違って、中身は胃袋ではないんです、といいながら、酢漬けのキャベツと一緒に頬張っている。 胃袋でないなら、一体何なんだろうか? しつこく聞くのが憚られて、小職も一口頂いたが、なかなか美味であった。 「豚の胃袋」と言われて、腰を引いてはいけないのだ。

デザートはApfelstrudel。 ドイツ風リンゴケーキだ。一口頂いたが、めちゃくちゃうまい。一口頂戴して、私は、自家製のチーズをさらに食べた。 このチーズはモッツアレラチーズみたいでアッサリしている。玉葱の輪切りとワインビネガーが掛かっている。 こういう食べ方もあるのか! メニューの名前は、Hauskaese mit Musik。 日本語で訳すと、「音楽付きの自家製チーズ」である。 Y社長によると、音楽付きの意味は、チーズを食べるとオナラがでるとのことである。 洒落た名前をメニューに付けるものだと感心する。

レストランのシェフは190センチはあろうかという巨体の持ち主。Y社長によると、ある日本人の女性に惚れて一度、日本まで追いかけていったらしいが、夢破れて、いまは、この辺りでは評判のレストランを経営しているのだと言う。人間は挫折を糧に、飛躍するということか?そして、挫折は、人を哲学者にもする。 レストランのメニューを見ればわかる。 持って帰りたいぐらいだった。ドイツの文人の食に関する箴言の抜書きがところどころにプリントされている。肉料理のところは19世紀の哲学者ニーチェだった。

Man lebt nicht nur vo Brode, sondern auch vom Fleische…….

人はパンのみで生きるにあらず、 肉もまた必要なり・・・

出典は、「ツァラトゥストラはかく語りき」からとある。 もぐもぐと、食物を咀嚼しながら、あれこれ思い巡らす。 箴言の楽しみだ。

食事をしながら、Y氏の音楽に関する薀蓄を聞く。 「小さい秋みつけた」という日本の歌は、チェコの作曲家スメタナの「パクリ」だそうだ。 スタンリー・キューブリックが「2001年宇宙への旅」で「美しき青きドナウ」を使ったのは天才的なヒラメキである。 私が割り込んで、マーラーの交響曲5番のアダージョ(これほど耽美的なメロディーがあろうか?)は、ルキノ・ヴィスコンティ監督が映画に使いたくて、トーマス・マンの「ベニスに死す」を映画化した、などなど。 

菜の花から脱線してしまった。菜の花に戻る。菜の花はおいしい。我が家で春先は、毎度のように「おひたし」が食卓に出る。飽きない。そういえば、数年前、悪友と広州で遊んだときに、中国人と飲みながらつっついた菜の花の中国風おひたしは絶品だった。海南島に移動する飛行機の乗り継ぎでたまたまビールを飲みながらつまんだのだったが、あの中華風おひたしは、忘れられない。菜の花を湯がいて、ニンニクと油と醤油とお酒と何か調味料の味付けをしたシンプルなものなのだが、何故もあのような絶妙な味になるのだろうか?

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