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2019年3月14日 (木)

袁枚、映画「夢の香り(Scent of a woman)、真鯛の刺身

3月12日(火) 晴

6時前に目が覚めて「中国名詩選」をパラパラと読む。清朝の袁枚(エンバイ)の漢詩が目に留まる。この人は、隨園食単(料理)の著書でも有名。


<題>
意有所得雑書   意に得る所有り
数絶句         数絶句を雑書す


<本文>
莫説光陰去不還   説(い)う莫(なか)れ 光陰(こういん)は去って還(かえ)らずと、
少年情景在詩篇   少年の情景(じょうけい)  詩篇(しへん)に在り。
燈痕酒影春宵夢   灯痕(とうこん) 酒影(しゅえい)  春宵(しゅんしょう)の夢、
一度謳吟一宛然   一度(ひとたび) 謳吟(おうぎん)すれば  一(いつ)に宛然(えんぜん) たり 


何となく大体の意味は分かるけれど、本文の意味を正確に知るために注釈をインターネットで調べると、

詩題の「意(こころ)に得る所(ところ)有り」は、ふと思いついたことを書きつけたという意味。
「灯痕」は灯火のあとのことで、勉学の日々。
「酒影」は酒宴のさま。
「春宵の夢」は、少年の大志、将来の大きな夢のこと。
「一度謳吟一宛然」は、詩を吟じればそっくりそのまま眼のまえに浮かんでくる。

必ずしも詩である必要はないだろう。昔読んだ本をひさしぶりにひらいたら学生時代にパリで乗った地下鉄の切符が栞代わりにページに挟んであるのを発見する。 あるいは、社会人10年目ごろだろうか、飲みにでかけてカラオケにいった(私のおごり)ことへの女性(複数)からのお礼のメモが出てきたり。それが一瞬にして、たぶん、都合の悪いことは忘れているのだろうけれど、当時の特定の場面や瞬間がありありと蘇ることがある。いずれも最近、本を整理しながら体験したことだ。



6時31分、ウグイスが囀る。


朝食:真鯛の兜煮(母が残したもの)、ポテトサラダ、沢庵、焼きのり2枚、ご飯。
昼食:ジャケットポテトとゆで卵にコーヒー


BS3で「夢の香り」(原題:Scent of a woman)を観る。1992年の製作。アル・パチーノが目の見えない退役軍人の主役を演じている。1990年代になるとほとんど封切り(ロードショー)の映画を見なくなっていたこともあり、この映画の題名は何となく知っては脳裏をかすめたことはあったが未見だった。原題の意味するエロチシズムのニュアンスに惹かれたのだろうか、少々迷いつつ、何の気もなしに見始めたらこれが面白い。大正解の良くできた私好みのベリー・グッドな映画だった。

この映画は、アル・パチーノ演じるスレート中佐の台詞のために作ったような映画のような気がする。それで、映画が必要以上に長くなってしまったのではないか。彼の台詞にはfuck,fuckingが頻出する。主人公は、根が正直で繊細、そして頑固一徹。軍人になったけれど、性格が災いして?途中で出世コースから外れ、酔っ払って手榴弾のジャグリングをしている最中に誤って爆発、失明し、人生は暗転する。自分の人生をはかなみ偏屈で辛辣になってしまった独身の初老の男だ。

もう一人の主人公は、裕福ではないが成績優秀で奨学金をもらって西海岸のオレゴン州からボストンにある名門プレップ・スクールに通う青年で、クリスマスに帰郷する旅行費を稼ぐためにアルバイトでスレート中佐の面倒を見ることになったシムズ(Simms)君(清水君ではない)。シムズ君はまじめな学生なのだが、学園の悪ガキ3人が学園長に悪戯を仕掛ける現場をその仲間の一人ジョージと一緒に目撃してしまう。皆の前で恥をかかされ激怒した学園長は、現場に居合わせた教員の情報からジョージとシムズの二人を呼び出し犯人を特定しようとするが、仲間意識で連帯感が強いのがプレップ・スクールの伝統で二人は口を割らない。学園長は一計を案じ、シムズ君には本当のことを言えば、成績優秀な君はハーバード大学に進学できるよう推薦状を書いてあげる、と持ち掛ける。感謝祭明けの翌週に公開の聴聞会を開くのでとくと考えるように、とプレッシャーを掛ける。



ハーバードには行きたいけれど、悪ふざけを働いた仲間を売ることには抵抗を感じる真面目なシムズ君はジレンマに悩む。そんな中、感謝祭で出かける家族と一緒に行動するのがいやで一人となったアル・パチーノの面倒を見るために週末のアルバイトに出かけたのがシムズ君。報酬は学生にとって破格の300ドルだ。
しかし、このスレート中佐は、静かに自宅で感謝祭を寂しく過ごすのではなく、実は、ニューヨークに出かけ、最高級ホテル(アストリア・ウォルドーフ)にとまり、最高級の食事をし(プラザホテルのオークルーム・レストラン)、最高の女と寝て(高級コールガール)、最後はピストル自殺する(blow my brains out)ことを目論んでいた。スレート中佐は、最初から初心なシムズ君を圧倒する。映画の三分の二は二人の会話で構成されている。初老の域に達すれば人間は丸くなるものだが、頑固一徹のスレー大佐から発せられる一言一言は容赦ない断言調の人生訓であり、軍隊で初年兵を訓練するような上官の口吻である。


目が見えない分、スレート大佐は匂いに敏感である。ファーストクラスのニューヨーク行きの飛行機の中で、ウィスキーのダブルをサーブするスチュワーデスに大佐は「ダフネ、ありがとう」と気持ちよさそうに声を掛ける。どうして名前を知っているのか、と怪訝に思って質問するシムズ君に、大佐曰く:

Well, she's wearin' Floris.That's an English cologne. But her voice is California chickie. Now, California chickie bucking for English lady...I call her Daphne. 
(彼女は英国ので有名なフロリスというコロンをつけている。彼女のアクセントはカリフォルニアのカワイ子ちゃん訛りだ。英国レイディにあこがれるカリフォルニアのカワイ子ちゃんを俺は、ダフネと呼ぶんだ)。
このセリフが頑固でいやなオヤジと思われた大佐が軽い冗談口調でシムズ君に少しずつ心を開いていく始まりである。



大佐は、一人で恋人の到来を待っている隣の席の美女ドナが放つ香りがOgleby Sisters Soap(アメリカの自然原料によるハンドメイドソープ)だと感知すると、一緒にタンゴ踊らないか誘いをかける。 タンゴをうまく踊る自信がないと逡巡するドナ。それに応える大佐の言葉がまた粋ですばらしい。

"No mistakes in the tango. No. Not like life. Simple. That's what makes the tango so great. If you make a mistake and get all tangled up, you just tango on."
(タンゴでは間違うということはないって。ない、ない、人生と違うって。単純そのものだよ。これがタンゴのすばらしいところだ。もし間違ってしちゃかめっちゃかになっても、ただタンゴを続けるんだよ。)


感謝祭の食事に招かれざる客として押しかけた兄の家では、義理の甥っ子の妻の香水はMitukoで、この香水は欲求不満の女がつけるものだと毒づきその場の雰囲気は最低になる。


大好きなウィスキーを、ジョン・ダニエルと呼ぶ大佐。ホテルの部屋のバーのウィスキーをすべてジョン・ダニエルにするようにとシムズ君に申し付けると、シムズ君が Don't you mean Jack Daniels?(ジャックダニエルの事?)と聞く。中佐は、He may be Jack to you son, but when you've known him as long as I have...that's a joke.(ジョンは息子のような君にはジャックだろうけど、俺は彼との付き合いは長いから、ジョンなんだよ・・・というのは冗談だけどね)。


こんな具合で、プエルトリコ人のベルボーイ、スーツを仕立てるために採寸に来たイタリア系のソフィア、ボディが超長いリムジンのマニー(高級コールガールを紹介する人。ドイツの外交官がアメリカに移住したいともらすほどいい女を紹介する)と交わす会話も滅茶苦茶面白い。

書いていたらきりがないくらいだ。女と楽しんだ後、中佐はいよいよ制服を着て自殺をする場面となっていくが、ここで必死に自殺を止めようとする真面目なシムズ君が、つぶやく言葉(あなたはすばらしい旅の友、誰よりタンゴはうまいし、フェラーリの運転も最高だったとほめる)で、自暴自棄だった中佐は何とか自殺を思いとどまる。


ニューヨークからマニーが運転するリムジンで帰宅すると、シムズ君ともう一人(ジョージ)の公開聴聞会が待っていた。説明を省くが、多額の寄付者の父親の入れ知恵で犯行をしたと思われる3人の名前を出したジョージに対し、シムズ君は知らないで押し通す。学長は聴聞委員会に対し、ジョージについては証言したことを評価しこれ以上の追及はなし、3人については証拠不十分で引き続き継続調査だが、シムズ君については、何と、真実を話さないことを理由に放校処分を聴聞委員会に提案する。


そして、ここで、聴聞会の途中から、シムズ君の保護者として会場に現れ、シムズ君の隣に座った中佐が爆発する。ふざけんなぁ!!!起立して、シムズ君の弁護を滔々と述べ始める。圧巻である。彼が正しいとか間違っているとかが問題ではない。彼は買収の提案を拒否して仲間を売ることを肯んじえない誠実な人である。このIntegrityこそが将来立派なリーダーとなる最も大切な資質であり、学長の提案はこれを抹殺する言語同断のとんでもないことで、この名門学の教育理念に真向から反する戯言ではなか。悪戯をなした3人はクソッタレだ、反省しろ。この誠実な青年の将来を奪う愚かなことがないように諸賢の判断を仰ぎたい、と。そして、着席する大佐。少し間をおいて割れるような会場からの拍手が巻き起こる。これで決まった。聴聞委員会は、シムズ君の無罪放免を決定した。


最後の場面で、聴聞委員会のメンバーの一人、独身の女性がキャンパスを歩く二人を追いかけて祝福を述べる。スレートは即座に彼女の香水がFleurs de Rocailleであることを言い当てる。フランスの香水だ。当りだった。スレートは「女」が大好きなのだ。二人の関係が始まるかも知れない予感。自分の家に戻るスレートの姿はおだやかで孫にも優しく声をかけるのだった。

映画が終わって少し疲れを感じるほど集中した。あっという間の2時間40分。私にとっては久しぶりに観るグッド・ムービーだった。火照る頭を冷やすために30分ほど千波神社周辺を歩く。肌寒いものの辺りの空気は梅の香りで一杯だった。

夕食:真鯛の刺身を肴にデンマーク産の黒ビールを飲む。真鯛の刺身は脂が乗って甘味がありこんなに美味いとは思わなかった。人生60数年で、真鯛をほとんど食べなかった自分を恥じるとまでは言わないけれど、遅すぎた舌の開眼である。若かりし頃、鳴門市でご馳走になって以来、というと大げさだが、我が家の食卓で真鯛の刺身を食べた記憶はない。しばらくは病みつきになりそうだ。刺身はマグロかタコだとばかり思っていたのだが。



Taisashi1


本日2本立てのもう一本の映画は森繁喜劇「駅前怪談」。ロケーションは山梨県の勝沼。1964年の制作。ヒッチコックの「鳥」が公開された直後なのだろう、お化けが出る恐怖シーンの効果音は「鳥」のそれだった。社長シリーズでいつも森繁の妻役を演じる久慈あさみが芸者役で登場していた。池内淳子はやはり芸者役で染太郎という名。このシリーズ、大空真由美が登場する前は、島かおりが次郎ことフランキー・堺の恋人役をやっていたということがやっとわかった。確か、「駅前弁当」がそうだった。三ツ矢サイダーを飲むシーンが何度か出てくる。なつかしいなぁ、サイダーなんてもう何十年も飲んでいないが、確かにあのころは夏になると、三ツ矢サイダーとかカルピスをよく飲んだものだ。

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