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2019年8月 5日 (月)

ル・カレの「パナマの仕立て屋」と松本清張の「点と線」

8月4日(日)晴

毎朝の目覚めは4時前後。このところヒヨドリの叫びがすごい。蝉が鳴き始めて、子育ての真っ最中というのもあると思われる。ヒヨドリの騒々しい叫びの後、このところウグイスがふたたび美声を聞かせてくれる。3月上旬の初鳴き以来半年。こんな実家の環境に感謝、感謝、感謝。野鳥の美しい囀りはα波である。癒されて心地いい。

昨夜は、途中からだったが、映画「パナマの仕立て屋」をBS放送で見た。イギリスのジェームズ・ボンドシリーズとは趣向がまったく違うスパイものだが面白かった。原作は「寒い国からやってきいたスパイ」のジョン・ル・カレ。パナマを舞台に繰り広げられる英国の大使館や諜報員の「腐敗」を描いたもの。ル・カレは、グレアム・グリーンの「ハバナの男」から着想を得たという。グリーンのこの本は未読だけれど、グリーンは大英帝国の版図も含めて世界各地を旅してはスパイ小説らしきものも書いた。

ロンドンのサビル・ロウ(日本語の「背広」の語源とも言われる)で腕を磨いたと称する、パナマで仕立て屋を営む英国人(実は、犯罪者で刑務所に収監されそこで腕を磨いた)はパナマの大統領を含む地元政界の大物の背広を仕立てるという立場を利用して同国の政情についてMI6の諜報員に情報提供者となる。動機は金。仕立て屋は脛に傷をもつもののパナマでは実直に人生を生きようとしていた。しかし、仕立てはうまいが商売はヘタ。カネに困り、一芝居を打つ。パナマ運河の利権が、中国(本土と台湾)勢力に売り渡されようとしていると、嘘の話をでっちあげる。仕立て屋が実際に交わしたパナマの大統領の会話は試着の場で、ズボンがきつ過ぎて睾丸が圧迫されるという苦情、であったのだが。

007も演じたピアース・ブロズナン演じるMI6の諜報員はジェームズ・ボンドのようはスーパースパイではなく、冷戦も終わりやることがなくなった!?暇なスパイの堕落の典型である。女好きのモラルのない男でひと稼ぎしようと、この情報を上層部(英国パナマ大使館)を経由しないでアメリカに売り込んだ結果、それを阻止するための巨額の工作資金(1千5百万米ドル)をアメリカのワシントン政府から得ることになった。

しかし悲劇が起こる。この嘘のために利用した友人であるもと反政府(ノリエガ)派の活動家の男を自殺に追い込んでしまう。主人公の仕立て屋は、これに慌てる。すったもんだの末(ジェイミー・リー・カーチス演じるアメリカ人妻が秘書を務める)パナマ運河管理会社の責任者を通して仕立て屋はパナマ大統領に連絡を入れ、アメリカの秘密部隊の攻撃は開始した直後に何とか撤収する。嘘情報で得た工作資金だが、英国パナマ大使は、諜報員を脅し口止め料として1万2千5百㌦をせしめるとともに、ブロズナンもまんまと金を持ってパナマを離れる。

仕立て屋は、涙ながらに妻ににすべてを告白する。子どもたちがキッチンにやってくると、妻は自分を欺いた夫(妻に恋したから自分の前科のことは話せなかったと告白した)に何事もなかったように「いつもの朝食を作って」と囁く。

コメディーではないが、各人各様が人間の醜さをコミカルに描いたような不思議な展開で、原作を改めて読みたくなるようなそんな映画だった。

暑さゆえに、日中は東向きの書斎兼寝室の窓の網戸から涼しい風を入れながら、何とはなしに開いたQuigleyのTragedy and Hopeを読みふけった。特に引き込まれたのは、アメリカ人の視点からするイギリスのunwritten constitutionとイギリスの権力構造についての叙述である。イギリス国民にはいまもって「主権」はないこと、彼ら国民大衆は「汝ら臣民」である、ことは知っているのだが、19世紀から20世紀前半にかけての大英帝国の栄華と凋落の過程でのイギリス政治の本質は「金権政治」があったいう指摘は目から鱗であった。頭の中での整理がまだつかず混沌としているけれど、イギリスは、少数のエリートが、イートン校のようなパブリックスクールやオックスフォードやケンブリッジで教育を受けたものが実質的にやりたいように帝国を支配し莫大な利益を享受したシステムであった(the ruler and the ruledの関係)が克明にかつわかりやすく書かれていた。デモクラシーの言葉は使っているがアメリカとは意味が全く違うし、アメリカ人にとってもイギリスの民主主義はミスリーディングなものらしい。

夜、偶然チャンネルを替えると、松本清張の「点と線」をやっていた。特集番組。ビート・たけしが刑事を演じているのだが見始めたらやめることができず23時まで観てしあった。ビート・たけしの松本清張原作の刑事ものは5,6年前にもおなじこの時期に「黒い福音」(カトリック神父による日本人スチュワーデス殺人疑惑事件)をやっていて、ついつい最後まで見たことを思い出した。清張さんのモチーフは「女の愛が生み出す悪」。

 

 

 

 

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